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高湯温泉紀行
高湯温泉紀行
高湯 昭和-平成時代編・不動滝と夏露天
2017/07/某日
林間に響く瀑音、不動滝で夏涼み
緑したたる夏。この季節、高湯を訪れたらぜひ足を伸ばしたい納涼スポットがある。“熊滝”、“鼓滝”と並ぶ“高湯三滝”のひとつ「不動滝」だ。大正時代の文献にもその名を連ねる滝までは現在、唯一、遊歩道が整備されている。入口は花月ハイランドホテル(詳細はこちらのブログを参照)の駐車場手前から右に折れた細い山道を登り、かつての硫黄鉱山跡の“ボタ山(捨石の集積場)”を過ぎた辺り。温泉街から歩いても30分程だ。(車で向かう際は道の途中にある駐車場を利用)
滝を見下ろす展望台でもある遊歩道入口には不動明王像が祀られ、生い茂る木々の間にちいさく滝の姿が見下ろせる。ここから滝壺までは一気に100m程下りる。途中には、ところどころ滑りやすい場所もある。足元は登山シューズや履きなれた靴がおすすめだ。
林間に響く水音に心躍らせながら、ひたすら下りること約15分。目の前に緑に抱かれた涼やかな瀑布が現れた。落差30m程だろうか。ちょうど扇子を広げたように滑状となった滝壺付近の岩肌を、幾筋にもなった白糸のような水がすべり落ちていく。その姿を正面に望む岩場によじ登り、霧のように細かな水飛沫を全身に受ける清々しさ。
ふと目を馳せればすぐ脇の岩穴に、苔むしたお不動様の姿も見える。水神である龍を従える不動明王は、修行における“魔”を払う神だ。この「不動滝」が古く、吾妻修験者の修行の場でもあったという話を思い出す。
ちなみに、来る途中にあった“ボタ山”は、明治から大正にかけて発見された2つの鉱山のひとつ、信夫硫黄鉱山跡だ。最盛期は年間3,000トンを採掘し活況を呈した鉱山で、1953(昭和28)年に休山したという。 [全文を表示]
高湯 江戸-明治時代編・冬の雪見露天巡り
2017/02/某日
いざ、“雪泊まり”の秘湯へ
「立春」も過ぎ、暦の上で春とはいえ、そこはまだ名ばかりの厳寒。すっぽりと深い雪に覆われる高湯の2月は、温泉好きの旅心を急かす雪見露天の季節だ。
昨年の“秘湯部門日本一”に続き、今年の“じゃらん2017年人気温泉ランキングの総合満足度”部門で、高湯温泉は栄えある第一位(!)に輝いた。折しも応募していた冬のお得企画「高湯で三泊富湯ごもり」の当選の吉報も届いたばかり!どうやら吾妻の神々と、私たちはすこぶるご縁があるらしい(笑)。
高湯に古くから伝わる湯めぐり指南は「三日一廻り、三廻り十日」。一般的に推奨されている温泉湯治は3週間程だが、高湯のいで湯は温泉成分の高さから、これを大きく下回る10日程で済むという。本来なら10日間滞在し、じっくりとこの説を心と体で感じたいところだが、残念ながら日程の都合で今回の予定は3日間のみ。予防医学が叫ばれる現代、温泉の果たす役割は近年、益々注目されている。有識者によれば、私たちのように長期逗留できない場合でも、健康維持のためには定期的な温泉利用が望ましいらしい。
年末から度重なる大寒波に襲われた今冬の日本列島。覚悟して向かった高湯は、ここ数日続いた小春日和のせいか積雪はやや少なめ。とはいえ、標高700mの寒暖の差で溶けてはまた凍りついた雪が、軒先に1m程もある見事な氷柱となって愉快な景色を描いている。
バイカーが選ぶ“日本絶景道50選”の6位にランクインする吾妻スカイラインが開通するのは例年4月初旬頃。それまで土湯方面への通り抜けができない高湯温泉は、まさに文字どおりの“雪泊まり(行き止まり)”の秘湯だ(笑)。高湯の冬は古き良き時代、ここを根城にひたすら湯と向き合い逗留した先人の暮らしを追体験できる、そんな場所のひとつかもしれない。
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高湯はじまり編・晩秋の一切経山を訪ねて
2016/10/某日
信仰の山、吾妻山に神秘の湖を訪ねて
山形県と福島県の県境に位置し、西吾妻山を最高峰に家形山、烏帽子山、東吾妻山、一切経山など2,000m級の山々が連なる「吾妻山(吾妻連峰)」は、その勇姿から古く山岳信仰の対象とされてきた。山内には今なお“賽の河原”や“天狗山”、“浄土平”、“蓬莱山”、“一切教山”、“経蔵ヶ沼(五色沼)”、“神蛇ヶ沼(鎌沼)”といった修験道にちなむ地名が数多く残されている。
吾妻山への登山口でもある高湯温泉の程近くにも、三途の川のほとりで亡者の衣類を剥ぎ取るという、“姥神信仰”に基づく“姥堂”の地名や、疫病退散や国家平安など、不動明王信仰に関わる「不動滝」がある。以前紹介した「安達屋」(詳細はこちらのブログを参照)の玄関前にある“吾妻山”の石塔は、かつて奥の院に行けない人々の遥拝所でもあったようだ。
吾妻山の“浄土平”(詳しくはこちらのブログを参照)の名は、高原植物であふれかえる季節に、極楽浄土を重ねたとも言われる。いずれにせよ、下界と一線を画す聖なる山域への畏怖がそこには込められている。
人と自然との長いつきあいの中で、我々は山に何を見つめ、登拝してきたのだろうか。古き時代と今とを繋ぐ、その心底に流れる祈りとは何だろうか。そんな想いを再燃させるニュースが突然、飛び込んできた。山が長い眠りにつく冬間近の晩秋、「一切経山 いっさいきょうざん」の噴火警戒レベルが引き下げられ、一部のコースで入山が可能になったという。胸に灯る想いの答えを見出すべく、一切経山の山頂から望む“魔女の瞳”こと、神秘の「五色沼」を目指すことにした。
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吾妻の紅葉巡り・花月ハイランドホテルと浄土平散策②
2015/10/某日
眺めと湯の贅沢が待つ、天空の宿
紅葉狩りも早くも終盤。今年最期の“見納め”を、どうせなら欲張りに満喫しようと、眺めの良さが評判の花月ハイランドホテルを再訪。ロッジ風の旧館とホテル風の新館が並ぶ近代的な施設に加え、高湯温泉の最奥、見晴らしの開けた高所に位置するホテルは、季節や時間帯によって変わる吾妻連峰のダイナミックな景色が一望できる。今回は、ここを拠点に浄土平の湿原をさらに攻略する予定だ。
到着早々、またもや前回を彷彿とさせる雨模様。連れと2人、少々、落胆した気持ちで案内された部屋は、雄大な山景を見渡すゆったりとした角部屋。残念ながら窓の外に広がる視界はゼロだが、贅沢なその開放感に、連れのテンションも少し持ち直したようだ(笑)
気を取り直して食事の前に、まずはひと風呂。近代的な造りと対象的に、湯浴み棟へと続く木造りの長廊下は、いかにも山の宿らしい風情あふれる佇まい。途中には、「湯あみ花月菩薩」を祀る祭壇や、“信夫高湯”と呼ばれたかつての高湯温泉街の古い絵図など、興味深い資料も展示されている。
ここ数年、ホテルでは大浴場をはじめ露天風呂や家族風呂が次々と改修され、誰にでもやさしいバリアフリーになったようだ。リニューアルにより名前も変わった大浴場「山の湯」は、その名のとおり自然林に囲まれた、蒼い湯色に映り込むカラフルな紅葉がオパールのように神秘的な煌きを放っている。源泉かけ流し、加水加温なしの100%天然温泉を誇る高湯で、この湯船の大きさを楽しめることは、まさに最高のもてなし。湯上り処には、医療器具としても使用されている治療機も設置され、山歩き後の疲れを癒してくれる。
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吾妻の紅葉巡り・静心山荘と浄土平散策①
2015/10/某日
居心地懐かしい、愛情手料理と人肌湯の宿
台風の影響による大雨の猛威から、まだ日も浅い10月初旬。吾妻の紅葉は、例年より1週間程早く見頃を迎えたという。浄土平の秋は短い。つい先頃、訪れたとはいえ(詳細はこちらのブログを参照)、今年の色付きはなかなかに鮮やからしい。これを見ない手はない。
深まる秋に急かされ訪ねたのは、以前、日帰りでお世話になった「静心山荘」(詳細はこちらのブログを参照)。メインストリートから少し入り組んだ小道を入った山の斜面に建つ宿は、高湯でも珍しい“ぬる湯”が評判だ。
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