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高湯よもやま話
高湯温泉の歴史や出来事など…
高湯温泉の名物みやげ「湯花」
2022/04/23 | 永山博昭
写真1→現在販売中の湯花
高湯温泉は福島県福島市にある吾妻山の中腹、標高750メートルにある小さな温泉地である。いわゆる秘湯と呼ばれている温泉地で、6軒の温泉宿と1軒の共同浴場がある。
その7軒の温泉施設の温泉浴槽(男湯や女湯や露天風呂など)を数えると、全部で51個の浴槽がある。そのすべての温泉浴槽が「源泉かけ流し」であることが、私たち地域が誇れることとして長年保ち続けてきた温泉の管理方法なのである。
高湯温泉は慶長12年(1607年)の開湯と言われているが、まさにそんな昔の時代から、綿々と引き継がれてきたのが「源泉かけ流し」である。
それでは「源泉かけ流し」とはどんな温泉管理方法なのであろうか。
それは「浴槽に温泉を注ぎ入れたら、その分だけ捨てる」というしごく単純な方法である。しかし現在では、この方法を採用している温泉施設は全国的にも多くはない。なぜならこの給湯方法は、温泉施設が引き湯している温泉水の量と温度によって、厳冬期に営業出来る浴槽の数と容量が決まってしまうからなのである。つまり別な方法をとれば、いくらでも浴槽の数と大きさを増やすことが出来るという事でもある。
写真2→大正13年頃の湯花汲み
現在の市道、登り上がると薬師堂へ至る
なぜ高湯温泉は「源泉かけ流し」にこだわるのであろうか。それは湯治場という、温泉を療養に使ってきた歴史があるからである。
安達屋旅館は高湯温泉の開湯の歴史とともにあり、現在18代目の後継者が宿を切り盛りしている。初代は伊達家の家臣で高湯温泉も領地の一部であり、この地での入浴が健康を取り戻したとされ、それが高湯への入植へのきっかけになったと言われている。
そのような経緯があり、高湯温泉は歓楽的な温泉営業をしてはならない、という地域内の取り決めが出来上がった。それは「一切の鳴り物を禁ずる」という一文にもあるように、温泉は療養のみに利用する、という決まり事である。
そのために鳴り物(三味線や太鼓)の禁止→宴会は療養に良くない。盆踊りの禁止→男女の出会いの場となり療養に良くない。腕相撲の禁止→賭け事になり療養に良くない。などなど療養を目的とした湯治場として、厳しく地域を律してきた。
実際に温泉を利用した信達地方(昔の福島伊達の地域名)の人々は温泉地の使い分けをしており、遊びは飯坂、湯治は高湯と言われていた。
また療養効果の高い温泉を維持するためには、山を荒らすなという伝えもある。それは温泉に何も手を加えない「源泉かけ流し」に通じる、ありのままでなくてはならない、という先人達の感覚的な確信もあったのだと思われる。
私たちは湯治客が日に日に体調が改善していくのを見て、温泉の効果は間違いないと思われていたが、その医学的また科学的な証明が必要だと思っていた。それは東日本大震災後の復興予算により実施した、高湯温泉療養効果実証事業により明らかになったが、その説明はまたの機会にしたいと思う。
写真3→乾燥中の湯花玉
さて今回の話題である湯花は、昔から温泉土産として販売されており、また汗疹などの皮膚の改善薬としても使われていた。各温泉宿の副業として湯花の生産はされていたが、現在の生産者は1軒の宿のみとなった。この宿は湯花採取のための専用樋を所有しており、季節を選びながら時間をかけて湯花を乾燥させている。
手間暇をかけたこの湯花は単なる温泉土産ではなく、高湯温泉の薬効を家庭に持ち帰りたかったという湯治客の素朴な思いの品でもあったのであろう。
ただし高湯の温泉水は強烈である。湯花といえども浴槽の追い炊き窯を痛めるし、メッキ部分は黒く変色する場合もある。給湯のみの浴槽であれば全身浴も可能だが、心配な場合はポリバケツに熱湯を注いで足湯に、洗面器で手湯にしてなど、湯花の濃さは使う方の好みで部分浴とする。
温泉水から生産された本物の入浴剤「湯花」で高湯温泉気分を楽しんでみてはいかがであろうか。
湯花を手に入れるには↓
花月ハイランドホテル、玉子湯の売店で
もしくはその他の宿でも販売中(売切れ御免)
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