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高湯温泉と吾妻の冬キノコ

2008/12/05 | 永山博昭

12月に入り高湯温泉では連日ミゾレ模様です。まもなく山は雪で閉じるでしょう。

さて現在吾妻の山で取れるキノコはエノキタケとムキタケです。雪が積もってからも採取できるので、エノキタケはユキノシタという別称もあります。また福島市松川町方面では和紙作りの原料となるコウゾの木にも出るので、コウゾタケとも呼ばれています。
作家の庄野潤三は高湯温泉に逗留執筆しておりましたが、旅館玉子湯での「ナメコ取り」を作品として発表しています。番頭が早朝にナメコを収穫して来る話ですが、じつに吾妻の秘湯で暮らす日常生活を描写していて、庄野らしい、また高湯らしい作品だと思います。

<エノキタケ汁>
キノコ狩りシーズン12月最後の収穫物は天然エノキタケです。スーパーで見かける栽培ノキとは似ても似つかぬ形状で、歯切れの良いシャキシャキとした食感や、適度なヌメリ、そしてキノコ自体から出るダシ、最高の食菌です。
枯れの入った半分生きてる木などに株状に発生し、茎はビロード状の黒色です。傘はしっかりとした明るい茶色で枯れ野でも良く目立ちますが、傘のヌルメに落ち葉を被り、遠目にはカモフラージュされている場合もあります。
エノキタケのおいしさは、火を通すと出るヌメリと出汁にあります。欲張って水を多くしないで煮込みます。煮込んだ汁にはエノキの旨みがたっぷりと出ていて、味付けは塩と醤油で十分です。具はシンプルに葱と豆腐が良いでしょう、うどんを煮込むとけんちん風汁でこれまた最高です。

<ムキタケのスキヤキ>
12月に入ってからのムキタケは、すべて落葉した林中ですぐに見つけられるかと思えば大間違いです。何の変哲も無い倒木を腹の方まで覗き込んで、溜まっている落ち葉を掻き分けるとやっと顔を出します。雪が降らねば林中が乾燥しているので、茸もゴム状に硬く色も緑で汚く見えます。
食べ方は、まずスキヤキを作ります。具沢山のスキヤキよりも、牛肉と葱だけのシンプルなものが良いです。なにせムキタケを食べるためにスキヤキをするのです。
ムキタケのおいしさは、火を通すと皮の下がプルプルのゼラチン質になることです。このキノコも遅茸で虫は入っていないので、ほぼ煮上がったスキヤキ鍋に直接放り込みます。乾燥状態だったムキタケは牛肉の煮汁を吸いながら、三倍もの大きさに膨らみます。そのプルプルの熱々を口に含めば至福の時!そういえば山形では、ムキタケの別名をノドヤキというんでしたっけ、納得ですねぇ。
簡単にするのなら牛丼の素と煮込んでもOKです。日本酒が良く合います。ただし毒茸のツキヨタケと酷似してますし、同じ倒木に一緒に生える場合もあるのでご注意。

【写真】~画像上エノキタケ
    ~画像下ムキタケ

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